把握した問題を緊急性、重要性、解決可能性に応じて分類し、取り組むべきものを解決可能な課題としてまとめることができる。

ポイント:
列挙できた問題を順位付けし、具体的な取り組みに進む準備ができるようにする。また、取り組むべき問題については、課題としてさらに明確化することが解決可能にするポイントになる。
なぜ?:
列挙したすべての問題を同様に取り扱うことはできない。どの問題から取り組むべきかを適切に判断できるかどうかは問題対応能力の基本となる。その判断では、個々の問題の緊急性、重要性、解決可能性の3点を考慮することになる。ここで、緊急性とは、問題解決を先延ばしすると問題がさらに深刻になり解決不能になることを指す。重要性とは、その問題が大きな意味を持ち当事者がすべてをさしおいてもその問題の解決を望む度合いを指す。解決可能性とは、その問題の解決の方策が現実的で問題を提起するものがその解決の主体あるいは支援者となりうることを指す。
次に、解決可能な形に課題としてまとめることになる。例を挙げると、単に「高血圧を治療する」というのでは、まだ疑問・問題という段階であり課題としてまとめられていない。何を治療の目的とするか、治療の目標はどう設定するか、どのような治療法を考慮するか、どのような副作用や不都合、負担などに注意する必要があるか、などなるべく具体的に治療計画が立てられるようにまとめることを指す。高血圧の治療の目的は、単に血圧を下げることではなく、脳卒中や心臓病などの合併症を避けることであるのに気づかせる。さらに、降圧剤にはたくさんの種類がありそれぞれ薬理効果や禁忌、副作用などが異なっている。この点にも気づかせれば、治療に先立ってどのようなことを確認すべきか、治療を開始してもどのような点に注意すべきか気を配る態度を身につける機会になる。この手順で疑問・課題を明確に定義できれば、どのような知識や技術、機材などが必要か明確になり、その後の解決に向けた取り組みは明確になる。
どこが難しいか:
個々の問題の緊急性や重要性を見積もるにあたって、臨床経験の少ない段階では十分患者や当事者の願いや思いが想像できないことが障害となる。たとえば、生命予後の重要性はわかっても、ADLQOLを改善するための手段を見落としたりする。検査計画においては、リスクやコストが高く苦痛の大きな検査を安易に用いたりする。
また、治療にせよ検査にせよ、選択肢を網羅的に列挙することができない場合もある。最新の実験的な治療が頭に浮かぶのに、昔からある基本的な治療を見落とすことがある。検査においては、今まさに評価されている最新の機材が必要な検査の有用性を過大に見積もり、身体所見やインタビューなどの基本的な診療能力で得られる情報の価値を軽視することがある。このような点は初期臨床研修で身につけるべき重要な知識である。このような知識は、十分身に付いていないことが多い。
指導のポイント:
ここでは指導医の臨床経験を活かしやすい。指導医の専門分野で多くの診断や治療に当たった疾患であれば、治療経過を含めた患者や当事者の事例を提示したり、そこで考慮すべきであった患者の価値観を代弁したりすることがそのまま指導として活かされる。現場ではどのように緊急度や重要度、解決可能性が見積もられるのかを示すことが指導のポイントになる。さらに、その中で、古くからある基本的な治療法や検査法、診察法に気づかせ列挙させれば研修医にとっては重要な学習機会となる。
臨床経験を積んだものには容易に思える課題の具体化という手法については、
Evidence-based MedicineEBM)の「課題の定式化」「解決可能な課題にまとめる」という手順を用いるとよい。そこでは課題を4つのパートに分けそれぞれを具体的で患者や当事者にとって切実なものにすることが勧められる。
課題の4つのパートを定義する。この4つは
PICO(またはPECOとまとめられる。
P: Patient/Population 患者・対象集団
I: Intervention/Indicator 介入方法・指標 またはE: exposure 曝露
C: Comparison/Control 比較・対照
O: Outcome 転帰
それぞれを具体化すること、特に転帰については患者・当事者にとって切実なものにすることを勧める。
また疑問や課題設定が「治療」以外にも向かうように指導する必要がある。
たとえば、
予後「患者の今後の経過はどうなるか、それは患者にとってどういう意味を持つか」
病因・害「この患者に、この治療を行うことで、○○という合併症が増えないかどうか」
具体的な指導法については、付録で解説する。