臨床研究や治験の意義を理解し、その結果を批判的に吟味し、問題解決に活かすことができる。

ポイント:
臨床研究結果を課題解決に活かす手法は、その研修医がどのような専門を選ぶにせよ基本的な技能となる。細かな統計学的な手法を知るよりも、妥当性を見極めるためのチェックポイントを活用し、要領よく価値の低い情報をふるい落とし、価値ある情報の妥当性と適用性、定量的な結果をくみ取って、課題解決に活かすために情報をまとめる作業に焦点を当てる。
なぜ?:
臨床での論文の読み方のポイントは、価値あるものを選び要領よく網羅的に読み、課題解決に向けて情報を整理することである。課題に関連する全ての論文を読むことが強調されると、論文を読む行為自体が不可能になる。入手可能な情報を読む価値があるかどうか、まずふるいにかけることが重要になる。さらに、複数の情報を手にした場合、どれがより妥当で意味が強いのかを見極めなければならない。単なる広告記事と厳密にコントロールされた臨床研究を同列に扱うような姿勢を放置することは避ける必要がある。
どこが難しいか:
研修医にとって、学習とは一方的に情報を受け取るイメージが強いかもしれない。しかし、現場での判断においては医療者として能動的な態度が求められる。課題を設定する能力を指導することに重点が置かれるのもこのためである。情報を主体的に取捨選択し、たとえその情報を発信しているものが「有効だ」と説いていてもその内容を吟味して場合によっては「読む価値なし」と判断する主体性が重要になることを確認する必要がある
また、英語論文を読むという行為を、英文長文読解のように思いこんでいればかもしれない。この誤解を解くためには、その論文を読む価値があるかどうかを判断し、内容を吟味し、その意味するところをくみ取るという作業の手順と、結局現場での判断に活かすという目的を明確にすることが重要になる。
内容の吟味については、その手順に焦点を当てるためにはチェックポイントを設定してそれを埋めるように内容を把握させるのがよい。一番避けるべきは、最初から辞書を引きながら読み始め、途中で結疲れてしまって読み進めるのがつらくなり、結局論文の最後の3行くらいに飛びついてそこを読んで安心してしまうといったパターンである。
チェックポイントを想定して、妥当性や結果、適用性を判断する上で重要なポイントを念頭に置いて、そのポイントを満たしているか、どの点で問題が残るかを見てゆくように指導する。このような手順は、最後の3行を読むよりも大変だが、論文を全部読み切るよりはずっと楽であることと、その論文の弱さと強さを見極めることが簡単になるという利点を強調する。また、このポイントは少しのトレーニングで分かるようになり、決して統計学的な専門知識を網羅的に身につけるような必要はないことを確認する。
さらに、あくまでも論文や情報は臨床判断の一要素にすぎず、それだけで判断を行うのは無謀である場合があることを確認しておこう。調整や手技が難しい治療や検査法、診断や分類の難しい疾患の予後判定などを題材にして、それをいきなり現場に持ち込むことがどんな結果になるか、どうしても導入しなければならない手法があった場合にどのような点に注意が必要か、一度議論するのも一つの方法である。もっともよいのは、実際に治療方針の変更の立ち会う経験を提供することである。

補足:
論文を読むという作業について