ベッドサイドでの課題整理のための問いかけ
最も重要なポイント:指導医がすべての情報を準備する必要はない。むしろ、若手や研修医に調べさせるのが重要。その上で、指導医の経験や知識、技術的な問題や現場の取り決めなどを気づかせながら、現場での判断につなげてやることが最大のポイント。
時間的な余裕がある場合には、重要な情報を知っていてもそれを示唆する程度にとどめて、若手・研修医の力量で自己学習させてからディスカッションに持ち込んだ方が、自分に頼りすぎないどこでも生きてゆける医師を育てることにつながる。

治療編
EBMのコンセプトをくじく発言
「この治療にエビデンスはあるのか?」
→「エビデンス」というあまり実態のない言葉で治療するかどうかを判断しているような印象を与える。

EBMのコンセプトを気づかせる発言
「この治療で期待される効果はどんな効果なんだろう。死亡率の軽減かな? 合併症の予防かな? 負担の軽減かな? 不満の軽減かな? いったい何なんだろう?」
→治療には目的があることに気づかせる。

「この治療の治療効果はどれくらいだろうか?」
→治療効果の判定にあたっては、定量的な治療効果が重要な意味を持つことを確認する。

「それは、どこに書いてあったのかな?」
→判断の基となった情報の出所を確かめておくことが重要なことに気づかせる。

「その治療効果はどんな研究で確かめられたのかな?」
→情報源となる研究にも良し悪しがあり、その良し悪しが情報の良し悪しにつながり、それが自分の判断の良し悪しにもつながることを気づかせる。

「他に、有効な治療法を忘れていないかな?」
→あらゆる選択肢を考慮することが重要であることに気づかせる。今話題の最新式のまだ不確かな治療に熱心なあまり、古くからある当たり前で確かな治療法を忘れてしまうような過ちをさけることができる。

「この治療の注意点は何だろう。何か副作用などはないのかな?」
→治療効果を打ち消してあまりある副作用のために捨てられた治療も多いことに気づかせる。また、副作用に注意して治療を行うことが治療効果を最大にすることにつながることにも気づかせる。

「今やっている治療で不要だったり副作用や害が懸念されるようなことはないかな?」
→新しい治療を導入することよりも、すでに行っている治療を見直すことの方が重要な場合もある。

診断編
EBMのコンセプトをくじく発言
「この症状があったらこの検査を行うのだ。」
→検査を行うことが自己目的化する発想を植え込んでしまう。

「この疾患の時にはこの検査が陽性になるけど、陰性の患者もいるので注意するように。」
→結局どうすればよいかわからなくなる。

ある疾患の診断を論じるときに「この疾患の時には、このような検査所見が見られる。」とその疾患の患者に見られがちな検査所見や問診内容、身体所見などを列挙するにとどめる。
→それぞれの検査陽性の重要性の重み付けができない。また、その検査が陰性であるときの意義付けができない。

(確定診断のついた患者について)「この疾患だったら、この検査も陽性になるぞ」
→陽性の検査結果をそろえることが、診断のプロセスだと誤解させてしまう。
→単に、「○○の検査もした?」「問診で○○を確認した?」と尋ねる方が誤解が少ない。

EBMのコンセプトを気づかせる発言
「この検査の感度特異度はどれくらいだろう」
→検査の偽陽性や偽陰性に気づかせる

補足1:もしも感度特異度を理解できなかったら
「この疾患でも、この検査が陰性の人はどれくらいいるんだろうか。」
「この疾患と違う○○の疾患でも、この検査が陽性の人がわりといるぞ」
「この検査が陰性だったら、この疾患でないと言っていいのかな」
「この検査が陽性だったら、この疾患だと結論してよいのかな」

引き続いて
「で、もしこの検査が陰性であっても除外診断できないのなら、次にどんな検査をしなければならないのだろうか」
「で、この検査が陽性であっても確定診断できないのなら、次にどんな検査をしなければならないのだろうか」

補足2:もしも事前確率の見積もりや鑑別診断リストの作成の重要性が理解できていなければ
「もし、この患者の年齢がもっと若かったら(あるいは高齢であったら)、どう考えるだろうか」
「もし、この患者の既往歴に○○があったら、どう考えるだろうか」