ガルシニアダイエットのエビデンス
(助産婦雑誌2000年9月号巻頭言 一部修正)医学書院に許可を得て掲載:無断転載はご遠慮下さい 副題:「批判的」に医療情報を吟味する会話の例

A「ねえ、ガルシニアダイエットって知ってる?」
B「えっ、あなたダイエットしてるの?」
A「ちがうわよ。ほら、時々女性雑誌に載っているでしょ。インド原産の薬草よ。これにやせる効果があるかどうか調べた研究を見つけたのよ。これが面白いんだから。」
B「ほんと!? で、やせるの?」
A「結論を急がないの。あせって結論だけ知ったって、ニセ情報だったら困るでしょ。信用できるかどうかちゃんと確かめないと。ほら、これがその研究なのよ。」
B「げっ。これ医学論文じゃないの。」
A「だからすごいんじゃない。雑誌広告やテレビ番組と全然違うのよ。真剣に調べてるんだから。もとは英語の論文なんだけど日本語訳だから読みやすいでしょ。」
B「ちょっと見せてね。なになに、地方新聞に広告を載せて、それに応募してきた人に協力してもらったわけね。対象になるかどうかはBMIっていう肥満の指標を使ったのね。そして、ガルシニアの有効成分を含んだ錠剤を飲む人と、プラセボというその成分を含まないニセものの錠剤を飲む群に分けて比較してるんだ。しかも、どっちの群にするかは、乱数表に従って決めたのね。」
A「これがランダム化よ。無作為割付って言う人もいるわ。こうやって決めないで、単に本人が飲むか飲まないかを決めたら、ダイエットに並々ならぬ情熱を持った人ばかり飲むかもしれないでしょ。それじゃあ、ガルシニアの効果なのか、その人の熱意のせいなのかわかんないじゃない。」
B「なるほどね。参加者は2週間ごとにクリニックを受診して、12週間体重を追跡して最後にまた体脂肪率を調べたのね。」
A「ちょっと短いかもしれないわね。1週間や1ヶ月で判断するよりはましだけど、1年くらい追跡してくれても良かったかもしれないわ。ねえ、そこの評価方法のところをみてよ。」
B「体重はデジタル体重計でクリニックで測定し、体脂肪量はレントゲンのスキャナーを用いて測定してるわね。単に写真を比べたり、自己申告じゃないんだ。これじゃあ、うそもつけないわ。」
A「しかも、誰がガルシニアを飲んでいるかわからないから、有利な手心も加えられないのよ。」
B「目隠しとか、盲検化とかって言うんでしょ。本人にもそれを見ている人にも、誰が何を飲んでいるのかわからないようにしておくのよね。こうすると確かに間違いは起こりにくそうね。しかし、どうやって対象者を選んだかとか、何でどうやって体重や脂肪を測ったか詳しく書いてあるわね。くどいくらい。」
A「こんなことを詳しく書いていても、結論だけ知りたい人にはむだに見えるかもしれないわね。でも、結論が信用できるかどうか知りたいひとにとっては、ここまで書いた方がちゃんとやったかどうかわかりやすくて親切でしょ。」
B「確かにそうね。やったことがいいかげんだったら、気が引けてここまで書けないわよね。ちゃんと書いているだけで信頼できそうな気がするわ。」
A「それにほら、参加者を選び出してから結局どうなったかを全部示しているの。図を見てみると、一目瞭然よ。180人対象となりそうな人がいて、そのうち45人は医学上の問題や予定の都合がつかなくて止めていて、135人が対象になっているでしょ。」
B「結局、研究の対象になった人がどうなったかが全部示されているのね。これを見ると、135人のうち69人がプラセボを飲んで、66人がガルシニアを飲んだわけね。でも、そのうちの何人かはクリニックに来なくなったりして途中で止めているわよ。」
A「そうなのよ。そこがこの研究の弱いところなの。結局12週の最後まで研究を続けられたのはそれぞれ60%くらいずつなのよ。命に関わるような病気じゃないし、しかも基本的に元気な人に外来で行っているわけだから、途中で止めたくなるのも分からないではないんだけど。」
B「でも、ダイエットなんだから入院してやるのも変だし現実的ではないわよね。これくらいが限界なのかしら。」
A「そうね。」
B「で、結果は... え!!
A「ねっ、面白いでしょ。」

参考:Heymsfield SBら:やせ薬としてのGarcinia cambodia(ヒドロキシクエン酸)JAMA日本語版 1999年10月号104110頁
原文:JAMA 1998 ;280(18):1596-600